Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

Lisez 落穂拾い・犬の生活 (おちぼひろい) de 小山 清 (こやまきよし) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 239 741 caractères · 486 écrans

Aozora Bunko

お婆さんの一言は、犬の姿態に感ぜられる、牝らしい優しさを私に気づかせた。

犬は沓脱石のわきにうずくまって、こちらの機嫌を窺うように薄眼をあけたりしている。

「野良犬ではないようだ。」

「ええ。この辺の犬じゃありませんね。自動車にでも乗せてきて捨てて行ったのでしょう。躯も汚れていないし、そんなに饑じがっているようでもないですね。」

お婆さんが犬に対してあまり冷淡な素振りも見せないので、私は少しほっとした。お婆さんはなお見しらべるような眼つきをしていたが、ふいに声をあげた。

「こりゃあ、仔もちだ。この犬は仔もちですよ。」

「え?」

「どうも妊娠しているようですよ。お乳の工合からなにから。」

「へえ、それはまた。」

「仔どもが出来たので、飼主が捨てたのでしょう。たいした犬じゃないししますしね。」

私は少しく興ざめた。にわかに犬が不身持の女かなぞのように見えた。かりそめの出来心からとんだ厄介ものをしょい込んだような気がした。お婆さんは犬の額に掌をのせて、無言のまま、やさしく撫でた。たいした犬ではないと云っておきながら、不憫がっているその様子に、私は心を惹かれた。人間が抱く感情の中で、やはり寛容は非難に優るものである。