Classiques japonais avec furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋
菊池 寛
Lisez 藤十郎の恋 (とうじゅうろうのこい) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 078 caractères · 25 écrans
これほどの恋を……二十年来忍びに忍んだこれほどの恋を、この世で一言も打ち明けいで、いつの世誰にか語るべきと、思うにつけても、物狂おしゅうなるまでに、心が乱れ申してかくの有様じゃ。のう、お梶どの、藤十郎をあわれと思召さば、たった一言情ある言葉を。なあ! お梶どの。(狂うごとく身悶えしながら、女の近くへ身をすり寄せる。が、瞳だけは刃のように澄み切っている)
お梶 わ……っ。(といったまま泣き伏してしまう)
藤十郎 (泣き伏したお梶を、じっと見詰めている。その唇のあたりは、冷たい表情が浮かんでいる。が、それにも拘らず、声と動作とは、恋に狂うた男に適わしい熱情を持っている)のうお梶どの。そなたは、藤十郎の嘘偽りのない本心を、聴かれて、藤十郎の恋を、あわれと思わぬか。二十年来、忍びに忍んで来た恋を、あわれとは思さぬか。さりとは、強いお人じゃのう。
お梶 (すすり泣くのみにて答えず)……。
(二人ともおし黙ったままで、しばらくは時刻が移る。灯を慕って来た千鳥の、銀の鋏を使うような声が、手に取るように聞えて来る)
藤十郎 (自嘲するがごとく、淋しく笑って)これは、いかい粗相を申しました。