Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
むし
虫
江戸川 乱歩
Lisez 虫 (むし) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 44 053 caractères · 86 écrans
暗くなると、彼は机の上の燭台に火をともして、夜更けまで読書をしたり、奇妙な感想文を書き綴ったりすることもあったが、多くの夜は、土蔵の入口に錠を卸して、どこともなくさまよい出るのがならわしになっていた。極端な人厭いの彼が、盛り場を歩き廻ることを好んだというのは、甚だ奇妙だけれど、彼は多くの夜、河一つ隔てた浅草公園に足を向けたものである。だが、人嫌いであったからこそ、話しかけたり、じろじろと顔を眺めたりしない、漠然たる群集を、彼は一層愛したのであったかも知れぬ。その様な群集は、彼にとって、局外から観賞すべき、絵や人形にしか過ぎなかったし、又、夜の人波にもまれていることは、土蔵の中にいるよりも、却って人目を避ける所以でもあったのだから。人は、無関心な群集のただ中で、最も完全に彼自身を忘れることが出来た。群集こそ、彼にとってこよなき隠れ簑であった。そして、柾木愛造のこの群集好きは、あの芝居のはね時を狙って、木戸口をあふれ出る群集に混って歩くことによって、僅かに夜更けの淋しさをまぎらしていた、ポオの Man of crowd の一種不可思議な心持とも、相通ずる所のものであった。