Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
たこのごときもの
蛸の如きもの
豊島 与志雄
Lisez 蛸の如きもの (たこのごときもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 085 caractères · 21 écrans
見たところ、ただ、蛸が蛸壺からちょっと覗き出し、またこそこそと引っ込んだ、それだけのことに過ぎない。屋内の空気は水中のように静かだ。
硝子の破片を掃きよせてる少女を横目で見やりながら、マネージャーの森田は言う。
「器物を壊されるのが、いちばん困りますよ。」
至極もっともなことだ。
「然しわたしのうちでは、何を壊されようと、決して賠償して貰わないことにしています。」
当然じゃないか。当然すぎて、面白くもおかしくもない。
言うことは平凡だが、それでも、森田の眼はいい。くるくると動くどんぐり眼で、聊かの濁りも留めず、いつも四方八方を見てるような、方向定かならぬ視線だ。時に瞼をつぶって、その内部でなにか考え、またぱっと打ち開き、目玉がぐるぐると廻転する。見てる方で眩しい思いがする。
眼の中に入れても痛くない、という愛情の表現があるが、森田の眼は、多くのものをやさしく抱擁してるに違いない。ただ、も少し静かにしていてくれるといい。酒の満ちた杯のように。今丁度、卓上の杯には酒が満ちている。電灯が映って、円やかにぼーっと閃めき……。
あ。
俺は酒杯の中にいた。
空中を飛行しているのだ。