Classiques japonais avec furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lisez 蜘蛛の夢 (くものゆめ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 147 189 caractères · 298 écrans
これではわたくしが浮かばれません。」
それは此の世の人とも思われないような、低い、悲しい声であった。秋山は思わずぞっとして振返ると、暗い雨のなかに其の声のぬしのすがたは見えなかった。
「仙助。あかりを見せろ。」
中間に提灯をかざさせて、彼はそこらを見廻したが、橋の上にも、橋の袂にも、人らしい者の影は見いだされなかった。
「おまえは今、なにか聞いたか。」と、秋山は念のために中間に聞いてみた。
「いいえ。」と、仙助はなにも知らないように答えた。
秋山は不思議に思った。極めて細い、微かな声ではあったが、雨の音にまじって確かに自分の耳にひびいたのである。それとも自分の空耳で、あるいは雨か風か水の音を聞きあやまったのかも知れないと、彼は半信半疑で又あるき出した。八丁堀へゆき着いて、玉子屋新道にはいろうとすると、新道の北側の角には玉円寺という寺がある。
その寺の門前で犬の激しく吠える声がきこえた。
「黒め、なにを吠えていやがる。」と、仙助は提灯をさし付けた。
その途端に、秋山のうしろから又もや怪しい声がきこえた。
「旦那の御吟味は違っております。」
「なにが違っている。