Classiques japonais avec furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lisez 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 970 caractères · 176 écrans
さてここは紙帳の内部である。――
唐草の三揃いの寝具に埋もれて、お浦が寝ていた。夜具の襟が、頤の下まで掛かってい、濃化粧をしている彼女の顔が、人形の首かのように、浮き上がって見えていた。眼は細く開いていて、瞳が上瞼に隠され、白眼ばかりが、水気を帯びた剃刀の刀身かのように、凄く鋭く輝いて見えた。呼吸をしている証拠として、額から、高い鼻の脇を通って、頬にかかっている後れ毛が、揺れていた。しかし尋常の睡眠とは思われなかった。気を失っているのらしい。
そのお浦の横に、夜具から離れ、畳の上に、膝を揃え、端然と、五味左門が坐っていた。
ふと手を上げて鬢の毛を撫でたが、その手を下ろすと、ゆるやかに胸へ組み、
「蜘蛛はただ網を張っているだけだ」と、呟いた。
「その網へかかる蝶や蜂は……蝶や蜂が不注意からだ」
と、また、彼は呟いた。
独言を云うその口は、残忍と酷薄とを現わしているかのように薄く、色も、赤味などなく、薄墨のように黒かった。
それにしても、紙帳に近寄る男は斬り、紙帳に近寄る女は虐遇むという、この左門の残忍性は、何から来ているのであろう?
紙帳生活から来ているのであった。