Classiques japonais avec furigana
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がいていのようこうろ
街底の熔鉱炉
佐左木 俊郎
Lisez 街底の熔鉱炉 (がいていのようこうろ) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 879 caractères · 14 écrans
「そうね。それがいいわね。今度そうさせてもらうわ。」
房枝はまた赤い緒の下駄を手にしてその部屋の中を横切った。
四
煉瓦の塀に沿うて泥溝の流れが淀んでいた。鼠色の水底を白い雲のようなものが静かに潜って行く。そして水面には襤褓切れや木片などが黒くなってところどころに浮いていた。その間からアセチリン瓦斯がぶくぶくと泡を噴いた。泡は真夏の烈しい陽光の中できらきらと光ったりしては消えた。煉瓦塀の中の工場から流れ出したアンモニアの臭気がその泥溝の上へいっぱいに拡がり漂っていた。泥溝の複雑な臭気の中から特にも激しく。――房枝は二階の窓からいつまでもその泥溝の流れを見おろしていた。
「本当にどうしたんだろうね? どこへ行っているんだろう?」
婆さんは言った。婆さんは退屈になって来たのだ。房枝は泥溝を見おろし続けていた。
「一緒に来いって言うから、こうして来ると、どこへ行っているんだか、まるで帰って来やしないじゃないか。いったい、何時間待たせるつもりなんだろう?」
婆さんは罵倒を始めた。すると、間もなく彼が帰って来た。
「どこへ行っているんですね? 一緒に来いって言うから、こうして一緒に来ると、どこへ行っているんだか、いつまで経ったっても帰って来やしないんだもの、全く呆れてしまう。