Classiques japonais avec furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lisez 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 351 caractères · 43 écrans
ただひょいとやっちゃっただけなんですから」
「珍らしくはないさ」と登がいった、「誰にだってそのくらいの覚えはあるだろう」
「ところがそのあとがいけねえ」と猪之はひどく早口で続けた、まるで話しているそのことから逃げだそうとでもするように、「あっしが唇を吸ったとたんに、おたまがあっしの口へ舌を入れて来た、九つの子ですぜ」そして彼はぐいと唇を拭き、唾でも吐きそうに顔を歪めた、「――あっしは十八だったが、そんなことはなんにも知らなかった、ことに相手はまだ九つだったし、ただおとなしくってすなおな、可愛い子だと思っていただけなんですから、柔らかくて熱い小さな舌がすべりこんできたときには、あっしはとびあがるほどびっくりして、おたまを突き放すなり逃げだしちまいました」
登は静かに笑いながら云った、「珍らしいことじゃあないさ」
「珍らしいことじゃあねえって」
「私にも覚えがある」と登は云った、「似たようなことが私にもあったよ」
猪之はいま眼がさめたというような顔で、へえといいながら登を見た。
「それで」と彼は問いかけた、「そんなことがあっても先生は、なんとも感じなかったんですか」