Classiques japonais avec furigana
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おどるちへいせん
踊る地平線(下)
谷 譲次
Lisez 踊る地平線(下) (おどるちへいせん) de 谷 譲次 (たにじょうじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 823 caractères · 283 écrans
その牛へ、ひとりずつ真正面から向って手銛を差すのだから、このバンデリエイルの勇敢と機敏と熟練と、そして危険さこそは、闘牛のなかの見どころである。声援と衆望のうちにおのおの牛へ接近して、或る者は牛の鼻さきの砂に跪まずき、または側面から銛をかざして狙っている。牛が静止してる時は決して突けないものだそうで、いま躍動に移ろうとして前肢に力の入った刹那、それがバンデリエイルの機会だ。牛のほうで自分の力で銛さきへ飛び刺さって来る。だからみんな、眼を据えて、牛の肢の筋肉の微動を注視している。
ひっそりと落ちる闘牛場の寂寞――。
鷹揚な牛が洒落た人間どもにいじめられてる。必ず殺されると決まってることも知らずに、牛はいま、何とかして生きようと最善を尽してるのだ。その努力が、また私をして面を外向けしめる。ふだんから牛の眼はどこを見てるのか解らないもんだ。この必死の土壇場になっても、「赤い小山」は一たいどこを白眼んでるのか見当がつかない。青空と砂を同時に見てるようでもあるし、ぼんやり周囲の見物席に見入ってるようでもある。悲しい眼だ。何を考えてるのだろう? 私にはそれがわかる――一体全たいこのすべての騒ぎは何のためなんだろう? 牛は不思議そうに首を捻っている。