Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

れきしにん

轢死人

豊島 与志雄

Lisez 轢死人 (れきしにん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 880 caractères · 8 écrans

Aozora Bunko

で、臆病な……というより寧ろ臆病癖のあるU君は、決して前方の隅へ腰を下さないのであった。所が私は隅が一番好きであった。それで始発駅から乗った私達は、車室の後方に腰を下し、私は隅にU君は私の横に坐っていた。

車室は込んでいなかった。私達と反対の側には、四五人の海軍士官が居た。その向うの方に、子供をつれた若い夫婦が居た。私達の側の向うに、土木請負師か御用商人かと思われる、三人の男が居た。

汽車は始発駅から四哩足らずを走ったばかりの所であったが、晩夏の曇り日の午後のこととて、皆黙り込んでうとうとしているらしかった。私達も口を噤んでしまった。汽車に向って突進していった男のこと、衝突や脱線の場合のこと、物理でいう慣性の法則のこと、そんなものが意識の奥にぼんやり霞んでゆき、車輪の響きと車体の動揺とに軽く揺られて、遠い夢心地を拵えていった。取り留めもない杳かな想念、窓の外を飛び過ぎる切れ切れの景色、身体に伝わる響きと動揺、而も安らかな静寂……ぽつりぽつりと小さな雨脚が、窓硝子に長く跡を引いていた。

汽笛が鳴ったようだった――それも空耳だったかも知れない。凡てが妙に落付き払っていた。