Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
Lisez 近世快人伝 (きんせいかいじんでん) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 79 469 caractères · 157 écrans
見ると、誰が暴れたのかわからないが昨夜の大きな酒樽が引っくり返って、栓が抜けている横に、汁椀が踏潰されている。通夜の連中に飲ましてやるつもりで、残しておいた酒は一滴も残らず破れ畳が吸い込んで、そこいら一面、真赤になって酔払っている。
その樽と、枕を左右に蹴飛ばした奈良原翁は、蹌々踉々として昨日の医者の玄関に立った。診察中の医者の首筋を、例の剛力でギューと掴んで大喝した。
「この藪医者。貴様のお蔭で俺は死損のうたぞ。地獄か極楽へ行くつもりで、香奠を皆飲んで終うた人間が、この世に生き返ったらドウすればええのじゃ」
度を失った医者はポケットから昨日の皺苦茶の一円札を出して三拝九拝した。
「……ど……どうぞ御勘弁を、息の根が止まります」
「馬鹿奴……その一円は昨日の診察料じゃ。それを取返しに来るような奈良原到と思うか。見損なうにも程があるぞ」
「どうぞどうぞ。お助けお助け」
「助けてやる代りに今日の診察料を負けろ。そうして今一遍、よく診察し直せ。今度見損うたなら斬ってしまうぞ」
因にその診察の結果は全快、間違いなし。健康申分なし。長生き疑いなしというものであった。