Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

みちづれ

道連

豊島 与志雄

Lisez 道連 (みちづれ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 366 caractères · 37 écrans

Aozora Bunko

僕は一寸一休みするつもりで、その腰掛を拝借して煙草を吸った。掛茶屋があるくらいだから見晴らしのいい場所で、横向きに首を差出して眺めると、向うの山から下手の谷間まで、月の光で一目に見渡された。対岸の涯には夜目に仄白い滝が掛っている。

僕はその景色に暫く見とれていた。すると、僕の横をすたすた通り過ぎた者がある。はっとして振向くと、若い女が一人で見向きもせずに通って行ったのだった。白足袋に草履を結いつけたその足先に、提灯の火がちらちらとさして、それが間もなく向うの曲り角に見えなくなってしまった。後はひっそりした静かな夜で、月が照っており溪流の音が響いてるばかりだった。

僕は夢でもみたようにぼんやりしていたが、だいぶたってから変にぶるぶるっと身震いがした。恐ろしさとも苛立ちとも分らない気持だった。……後で気付いたことなんだが、温泉から僕は一人の人にも出逢わなかったし、追い越した者も追い越された者もなかったのだ。それから推して考えると、彼女は僕より後に温泉を発って僕を追い越してしまったのか、またはどこか遠くの道からやって来たかに違いない。が、何れにしても変である。