Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

のわき

野分

山本 周五郎

Lisez 野分 (のわき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 401 caractères · 42 écrans

Aozora Bunko

正陟はぐっと上半身を前へのり出した。

おまえの知っているその藤七とか申す老人は、七十幾歳になるということだが、六十三のこのおれとどちらが若くみえる、この白髪、この皺たるんだ皮、どちらが多く老衰してみえるか。

「どうしてこのように老衰したかは云うまい、然しこのような父を棄て、苦しい退屈な勤めに一生を捧げる武家生活を見限って、自分だけ人間らしい自由な生き方へ奔る、それでおまえは満足できると思うか、……そう云われたとき、おれがどのように感じたか、爺さんには察しがつくだろう」又三郎はこう云って藤七の前に頭を垂れた、「……自分だけそういう世界から逃げだす、自分だけ、いやできない、おれは戸沢家の世子になる覚悟をきめた、爺さん、わかって呉れるか」

さっきから膝を見おろしたまま黙っていた老人は、かすかに頷きながら、拳でそっと眼をこすった。又三郎は冷えた盃をとり、眉をひそめながらくっと呷った。

「これでおれの夢は消えてしまった、然しまだ一つだけ残っている、それはお紋だ、気兼のない裏店に住んで、爺さんとお紋と水入らずで、夏は肌脱ぎ冬は炬燵で、気ままな暮しをする積りだった、それはできなくなった、堅くるしい屋敷住いで、気も詰ろうし可笑しくもなかろうが、おれの唯一つの夢なんだ、爺さん、お紋を又三郎の妻に貰えないか」