Classiques japonais avec furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lisez 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) de 伊藤 左千夫 (いとうさちお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 30 105 caractères · 61 écrans
事の余儀なきにしぶしぶ出てきて足の重い人もあろう。
自分は考えるともなしこんなことを考えながら、心のすきすきに嫂の頼み少ない感じが動いてならなかった、博士は駿河台の某病院長である。自分は博士の快諾を得てすぐ引っ返したけれど、人力もなく電車もないのに気ばかりせわしくて五体は重い。眉毛もぬれるほどに汗をかいて急いでも、容易に道ははかどらない。
細りゆく命をささえて、病人がさぞかし待ち遠であろうと思うと、眼もくらむばかりに苦しくなる。病人の門を望見したときに、博士は二人引きの腕車で後からきた。自分はともに走って兄の家に飛び込んだ。けれども門にはいってあまりに家のひっそりしているを気づかった。果たして間に合わなかった。三十分ばかり前に息を引きとったとのことであった。博士は産後の出血は最も危険なこと、手当てに一刻の猶予もできないことなどを語って帰った。寄った人の限りはあい見て嘆息するほかはなかった。
嫂は四十二であった。きのうの日暮れまでも立ち働いておったそうである。夜の一時ごろにしかも軽く分娩して、赤子は普通より達者である。
自分は変わった人のさまを見るに忍びなかったけれど、あまり運命の痛ましに、会わずにいるにもたえられない。