Classiques japonais avec furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lisez 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 598 caractères · 26 écrans
立ち停まった二人を眼智く発見けた海老床甚八とに組の頭常吉、人を分けて飛んで出た。
「親分、早速の御足労、かたじけねえ。」
「お出を待ってね、あれ、あのとおり、何一つ手をつけねえで放っときやした。八丁堀を前に控えてこの手口、なんと親分、てえっ、惨えことをやらかしたものじゃごわせんか。」
と、慌てて開いた衆中に立った釘抜藤吉、返事の代りにううと唸って見る間に唇を歪めたが、桔梗屋の軒高く仰いで無言。
十二月と二月の八日はそれぞれに事始事納の儀とあって、前夜から家々に笊目籠を竿の頭へ付け檐へ押し立てて、いとこ煮を食するのがそのころの習慣だった。なるほど今町の左右を見れば、軒並に竹竿が立って、その尖端の笊に雨の点滴が光っている。だから、桔梗屋の庇下左寄りの隅にも、天水桶と門柱との間に根元を押し込んで、中ほどを紐で横に結えて、高さ一丈ばかりの青竹が立っているのは、これは少しも異とするにたらないが、その竹の先に、南瓜のように蒼黒く凍かんで載っかっている一個の物、それは笊ではなくて、斬口鮮かな――男の生首だった。
甚八と常吉とがいっしょに口を開こうとした。言葉が衝突って、双方、愕いて声を呑んだ。