Classiques japonais avec furigana
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かのように
阿部一族・舞姫
Lisez 阿部一族・舞姫 (かのように) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 69 875 caractères · 141 écrans
七月十日は石田が小倉へ来てからの三度目の日曜日であった。石田は早く起きて、例の狭い間で手水を使った。これまでは日曜日にも用事があったが、今日は始て日曜日らしく感じた。寝巻の浴帷子を着たままで、兵児帯をぐるぐると巻いて、南側の裏縁に出た。南国の空は紺青いろに晴れていて、蜜柑の茂みを洩れる日が、きらきらした斑紋を、花壇の周囲の砂の上に印している。厩には馬の手入をする金櫛の音がしている。折々馬が足を踏み更えるので、蹄鉄が厩の敷板に触れてことことという。そうすると別当が「こら」と云って馬を叱っている。石田は気がのんびりするような心持で、朝の空気を深く呼吸した。
石田は、縁の隅に新聞反古の上に、裏と裏とを合せて上げてあった麻裏を取って、庭に卸して、縁から降り立った。
花壇のまわりをぶらぶら歩く。庭の井戸の石畳にいつもの赤い蟹のいるのを見て、井戸を上から覗くと、蟹は皆隠れてしまう。苔の附いた弔瓶に短い竿を附けたのが抛り込んである。弔瓶と石畳との間を忙しげに水馬が走っている。
一本の密柑の木を東へ廻ると勝手口に出る。婆あさんが味噌汁を煮ている。別当は馬の手入をしまって、蹄に油を塗って、勝手口に来た。