Classiques japonais avec furigana
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あまよぞくし
雨夜続志
田中 貢太郎
Lisez 雨夜続志 (あまよぞくし) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 181 caractères · 11 écrans
婢はもう傍にいなかった。山田は手を鳴らした。山田も伊沢もかなり酔うていた。
山田は気が注いてみると一人になって酒を飲んでいた。伊沢は便所にでも往ったものだろう、まさか己に黙って一人で帰ったものではあるまいと思って、廊下に音でもしはしまいかと盃を口の縁に持って往ってから耳を澄ましてみた。
ところで、ぼしゃぼしゃと屋根瓦を洗う雨の音が聞えるばかりで、跫音らしい物音は聞えなかった。ついすると伊沢は己に黙って帰ったかも判らない。婢を呼んで訊いてみようと思って、盃を置いて手を鳴そうとして両手を合わせていると、ふと己のむこうへ来て坐った者があった。山田は伊沢が便所から帰って来たものだと思った。
「君が帰ったのじゃないかと思って、婢を呼んで、訊こうとしていたところだ」
山田はこう云って食卓越しに眼をやった。三十前後の微髭の生えた精悍な眼つきをした男が坐っていた。中古になった仙台平の袴の襞が見えていた。山田は見覚えのある人だと思ったがすぐには思いだせなかった。
「どうだ、山田君、君は吾輩を覚えてるかね」
それはその日、伊沢と噂をした木内種盛の昔のままの姿であった。
「木内先生でございますか」