Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ゆきとどろ

雪と泥

山本 周五郎

Lisez 雪と泥 (ゆきとどろ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 993 caractères · 40 écrans

Aozora Bunko

父は居間に寝る習慣なので、そこに父が寝ている以上どうすることもできない。折之助はあせった、いちどは肚をきめて、父に頼んでみようかと思った。けれども、父がふところから印伝革の財布を出し、ぱたぱたと垂らして、渋い顔をしながら手を入れる恰好を想像すると、それだけでもううんざりした。

三十日はおしのと約束の日であった。

まさか風邪ぐらいで、登城をやめるようなことはあるまい。そう思っていたが、又左衛門は朝早く家扶を呼んで、病気の届けを出すようにと命じた。それを聞いて、折之助はもうだめだと思った。

――だが金だけは手に入れなければならない、あの金だけは、どんな事をしても。

午後になって、彼は外へ出た。

「どこへいらっしゃるの」と母が心配そうに訊いた、「父さまも御病気だし、こんな降りそうな天気なのだから、用でないのなら家にいて下さいな」

「風邪ぐらいで病気だなんて大袈裟ですよ」

「そういうけれど高い熱が少しもひかないし、今朝っから胸が痛いなんて云ってらっしゃるし、普通の風邪ではないかもしれませんよ」

折之助は気にかけもしなかった。伊丹と約束があるからと云い、注意された雨具も持たずに家を出た。