Classiques japonais avec furigana
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でんしゃていりゅうじょう
電車停留場
豊島 与志雄
Lisez 電車停留場 (でんしゃていりゅうじょう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 082 caractères · 31 écrans
その噂に人一倍憤慨したのは、老教師の人格を尊敬している高倉玄蔵だった。彼は学校で噂をちらと耳にしてから、夕食の折五六杯の酒に赤くなりながら、人の善い細君を相手に悲憤慷慨した。そして細君の同感ではなお物足りなくて、退職将校で体操の教師をしている同僚の家を訪れ、二人で大に校風の頽廃を論じ合った。然し結局の所、漢文の老教師の免職云々は、単なる噂に過ぎなくて、それについての対策を立てるなどは、早計な馬鹿げたことであるばかりでなく、直接自分と関係のない余計なことに思われてきた。彼は充ち足りない心を懐いて帰ってきた。自分自身が軽率で愚かであるような気もした。そしてまたその反動として、或る漠然たる正義観念で胸が脹れ上った。電車の中にどっしりと腰を下して、両肱を膝の上に張りながら、世風を慨するといった眼付で、自分の愚かさを自らごまかす気味も加わって、あたりを睥め廻していたのである。そこへ、野口昌作と車掌との事件が起ってきた。
高倉玄蔵にとって第一気に喰わなかったことは、野口昌作の才走った屁理屈だった。次に気に喰わなかったのは、人造絹のネクタイに光ってる、彼のネクタイピンだった。