Classiques japonais avec furigana
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あおきのしゅっきょう
青木の出京
菊池 寛
Lisez 青木の出京 (あおきのしゅっきょう) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 513 caractères · 43 écrans
そこには、明確に過ぎると思われるほど、丁寧な楷書で、広井雄吉と署名されて、捺印されている。
「俺はもう何もいわない。最初その小切手が、俺の手文庫から紛失しているのを発見した時、俺は女中か何かの出来心かと思っていた。それが俺の考え違いであったことを、俺は遺憾に思うだけじゃ。俺は、貴君に対して、別に法律上の制裁を与えようというのでもなければ、その金を返してくれというのでもない。ただ貴君が、俺の家を出るということだけは、この場合、貴君が当然採るべき義務だと思うだけだ。ただ貴君のために一言いっておくが、今度のことで、貴君がなんの制裁をも受けなかったといって、これから後もやはりこうしたことを続けていると、貴君は社会的に、存在し得なくなるからな」と、苦り切ってはいたが、しかし紳士としての自分の品格を、傷つけることを怖れるかのように、その心に動いている雄吉に対する侮蔑と憤怒とを、あくまでも冷静に抑えているらしかった。
雄吉は、ただ茫然として、すべての考察を奪われた人間のごとく、主人と自分との間にある畳の縁を、ぼんやりと見つめているばかりであった。彼のこれほどまでに尊敬している青木が、主人の手文庫から小切手を盗み出したということが、彼には夢にも予想し得ないことだった。