Classiques japonais avec furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Lisez 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 121 438 caractères · 238 écrans
たとえ流行したと申したところで、予防も消毒も十分に行きとどきますから、一度の流行期間に百人か二百人の患者が出るのが精々でございます。ところが、以前はなかなかそういう訳にはまいりません。安政時代の大コレラというのはどんなでしたか、人の話に聴くばかりでよく存じませんが、明治時代になりましては、十九年のコレラが一番ひどかったと申します。
わたくしは明治元年の生れで丁度十九の夏でございましたから、その頃のことはよく知っておりますが、そのときの流行はひどいもので、東京市内だけでも一日に百五十人とか二百人とかいう患者が続々出るというありさまで、まったく怖ろしいことでした。これから申上げるのはその時のお話でございます。
わたくしの家は小谷と申しまして、江戸時代から代々の医師でございました。父は若い時に長崎へ行って修業して来ましたそうで、明治になりましてから軍医を志願しまして、西南戦争にも従軍しました。そのとき、日向の延岡で流弾にあたって左の足に負傷しまして、一旦は訳もなく癒ったのですが、それからどうも左の足に故障が出来まして、跛足という程でもないのですが、片足がなんだか吊れるような具合いで、とうとう思い切って明治十七年から辞職することになりました。