Classiques japonais avec furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lisez 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 653 caractères · 73 écrans
事件引継簿の頁の上にはげんのしょうこの液の玉が盛上っていた。課長は、机の引出から赤い吸取紙を出して、茶色の水玉の上に置いた。吸取紙は丸く濡れた。その吸取紙を課長が取ってみると、帳簿の上の水玉は跡片なく消え失せていた。課長の当面の仕事は終った。
おれの次の仕事は、何時になったら出来てくるのであろうか――と、課長は背のびをしながら、両手を頭の後に組んだ。
失踪の博士
いつもなら、そういう面会人は必ず応接室へ入れるのが例になっていたが、今日ばかりは特別の扱いで、課長はいそいそと席から立って指図をし、その面会人を自分の机の横の席へ通させたのである。ちょうどその日のお昼前のことであった。
面会人は臼井藤吾という姓名の青年であり、この臼井青年を紹介して来たのは、課長と同郷の大先輩である元知事目賀野俊道氏であった。しかし課長は、この大先輩に対し、あまり尊敬の念を持合わしてはいなかった。
「実は重大人物が行方不明となりましたものですから、特に課長さんの御尽力に縋りたいと存じまして、目賀野閣下から紹介して頂いたような次第でございます」
青年臼井は、ポマードで固めた長髪を奇妙に振りながら、近頃の青年にしては珍らしく鄭重な言葉で挨拶をしたのだった。