Classiques japonais avec furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lisez 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 527 caractères · 23 écrans
「やるか!」
藤波が腰をひねって、とっさにすっぱ抜こうとすると、この時、顎十郎は懐手をして、もう四五間むこうをゆっくりと歩いていた。
「なんだ、つまらぬやつ」
千太は、聞えよがしに、
「眼の前で『顎』とひと言いうと、かならずぶった斬ると評判だけは高えが、なんのことやら……」
と言って、藤波のうしろから歩き出そうとし、とつぜん、うわッと声をあげ、
「旦那!」
「なんだ、けたたましい」
「せ、背中の紋が丸く切りとられて、膚が出ています」
「えッ」
かたびらの背中だけが紋なりに丸く切りとられ、膚には毛ほどの傷もついていなかった。
ぞっと冷水をあびたようになって、言葉もなく二人が眼を見合せていると、人気のない筈の杉の林の中で、大勢の人間がドッと声を合わして笑い出した。木立の間をすかして見ると、これは、いったい、どうしたというのだろう。馬丁、陸尺、中間ていのものが、凡そ五十人ばかり、むらむらと雲のようにむらがっていた。
ねずみ
顎十郎が組屋敷の吟味部屋へ入って行くと、叔父の庄兵衛とひょろ松が、あけはなした櫺子窓の下で、上きげんの高声で話し合いながら、笑っていた。
顎十郎が入って来たのを見ると、庄兵衛は日ごろの渋っ面をひきほごして、