Classiques japonais avec furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lisez 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 040 caractères · 26 écrans
金助町の庄兵衛の屋敷におつめきりになり、まだかまだかと判官もどきに痩せるような思いをしていられるそうでございます」
甲斐守は、もっとも、というふうに深くうなずいて、
「そういうことであれば、なかなかもって心配どころの騒ぎではない。わざわざ相吟味をねがいあげ、その当日になって、当人がおりませんでは、いかようにも申訳けが相立つまい。御周旋くだされた阿部さまの面目も丸つぶれとなる。いや、播磨守の憂慮はなみたいていのことではあるまい」
藤波は痩せた肩を聳やかすようにして、
「ところで、わたくしの憂慮もなみたいていのことではありません。そのことばかりで、さっきから生きた気持もないのでございます」
というと、ふ、ふ、ふ、と笑って、
「どうせ、無情無慈悲は生れつき。庄兵衛が逆上して卒中を起そうと、播磨守さまが面目玉をふみつぶして隠居なさろうと、そんなことをお気の毒とも、おいたましいとも思うのじゃない。あのひょうげたへちま面が、二度と御府内でぶらつかねえように、今度こそ根こそぎ叩きつけ、息の根をとめてやろうという、かけがえのないこの晴の日に、その相手がゆくえ知れずでは、まったく、……まったく死んでも死に切れない。