Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しょくよく
食慾
豊島 与志雄
Lisez 食慾 (しょくよく) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 672 caractères · 20 écrans
野口は、朝から何か生臭いものを食べるのが好きです。沓掛に来ましては、魚類が不便なので、牛肉の罐詰や佃煮や、時にはすぐ側の旅館にたのんで鯉こくなどを、朝から食べました。そして、脂のぎらぎら浮いてる味噌汁を、音を立ててすすったり、佃煮で茶漬にした御飯を、くしゃくしゃかんだりしますのを、そばで見ていますと、その匂いがむかむかと胸にきて、私はもう何にも食べる気がなくなります。いくら眼をそらしてもだめなんです。すると野口は、気の毒そうな眼付で私を眺めます。やはり、冷い、氷のような憐憫です。その奥に、恐ろしい野性……そんなものを私は感じてはいけなかったのでしょうか。
――「お前は、胃腸も悪いかも知れないが、それより、神経衰弱かも知れないよ。」と野口は申します。
まあなんと、安っぽく、片付けてしまったことでしょう。時々、野口のそばで、私はぞっと、云い知れぬ不安を覚ゆることがありましたが、それは神経衰弱なんかのせいではありません。野口のうちには、何かこう、私を押し潰してしまうようなものがありました。それが何であるか、本体を捉えようとすると、私はただ、自分の弱さや脆さを感ずるだけでした。