Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まと

魔都

久生 十蘭

Lisez 魔都 (まと) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 293 999 caractères · 578 écrans

Aozora Bunko

土堤下の遠いところを、夜番の拍子木がカチカチ、嚔一つして通り過ぎた後は夜気沈々、聞こえるものは折柄の上潮がヒタヒタと岸を打つ音ばかり。

あたかもこのころ、言問橋の方から疾駆して来た一台の自動車、囲地の一町ほど手前でピタリと停る。その内から降り立って来た者は誰あろう、いうまでもない、かの執着の刑吏真名古明その人であった。手真似でタクシイを帰すと、少し登りになった土手の上の道を、ソロソロと囲地の近くまでやって来て、並木の桜の幹に身を凭せ、冷々と月の光の中に立ったのである。

冴えかえる寒月は川の面に映じ、夜舟の櫓の音も凍るよう。一羽二羽、海鳥がギャアと断末魔の悲鳴のような、物凄い声を夜空に長くひく。

と、それと同じような叫び声が、通り一つ越えた海鼠塀の向うでも起った。ア、ア、ア、と尾をひいて、それがすぐ、ひいッという啜り泣きの声にかわる。

真名古はキッとその方を見込んでいたが、桜の幹から身を離すと、宙を飛ぶようにしてそっちへ駈け出す。

海鼠塀の角を道路について曲ると、そこに一間ほど塀のとぎれた個所がある。首を差し伸して見やるなれば、焼木材や切石がゴロゴロした空地の真ン中で、今しも黒い三つの影が組んずほぐれつしている。