Classiques japonais avec furigana
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ばんがり
鷭狩
泉 鏡花
Lisez 鷭狩 (ばんがり) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 763 caractères · 22 écrans
洗面所の壁のその柱へ、袖の陰が薄りと、立縞の縞目が映ると、片頬で白くさし覗いて、
「お手水……」
と、ものを忍んだように言った。優しい柔かな声が、思いなしか、ちらちらと雪の降りかかるようで、再び悚然として息を引く。……
「どうぞ、こちらへ。」
と言った時は――もう怪しいものではなかった――紅鼻緒の草履に、白い爪さきも見えつつ、廊下を導いてくれるのであろう。小褄を取った手に、黒繻子の襟が緩い。胸が少しはだかって、褄を引揚げたなりに乱れて、こぼれた浅葱が長く絡った、ぼっとりものの中肉が、帯もないのに、嬌娜である。
「いや知っています。」
これで安心して、衝と寄りざまに、斜に向うへ離れる時、いま見たのは、この女の魂だったろう、と思うほど、姿も艶に判然して、薄化粧した香さえ薫る。湯上りの湯のにおいも可懐いまで、ほんのり人肌が、空に来て絡った。
階段を這った薄い霧も、この女の気を分けた幽な湯の煙であったろうと、踏んだのは惜い気がする。
「何だろう、ここの女中とは思うが、すばらしい中年増だ。」
手を洗って、ガタン、トンと、土間穿の庭下駄を引摺る時、閉めて出た障子が廊下からすッと開いたので、客はもう一度ハッとした。