Classiques japonais avec furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lisez 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 37 256 caractères · 77 écrans
夜店の蒔絵九谷と相映じて現代的絢爛の色彩下手な油画の如し。杖に倚って佇立む事須臾なり。忽見る詰襟白服の一紳士ステッキをズボンのかくしに鉤して濶歩す。ステッキの尖歩々靴の踵に当り敷石を打ちて響をなす事恰も査公の佩剣の如し。
洋人遊歩する時多くは杖を携う。或は腕につるして下げ或は腋下にたばさみ或は柄を下にし尖を上にして携うるものあり。皆流行に従って法あるが如し。巴里の街頭は世界各国の風俗を見る処然れども未だステッキを佩剣の如くなすもの非ざるべし。銀座は極東帝国の街衢なり尚武の国風自らステッキに現わる。
余日本に帰りてより久しく杖を携えず。図書館劇場展覧会等に赴くや下駄と一緒に荒縄で縛られ帰る時復手にすること能わざればなり。此に於てか無用の長物無きに如かざるを思い代うるに蝙蝠傘を以てするやここに年あり。当時東京市中の散策記日和下駄の一書を著し大に蝙蝠傘の杖に優る事を論じき。然るに一たび胃を病んで長く徒歩すること能わず、蝙蝠傘日和下駄漸く用なきに今年更に痔を病み愈歩行に苦しむ。再び傘を杖にするに棒弱く棒の太きを選ぶに甚重し。ここに於てか思わざりき往年里昂にて購いたるステッキ今復外出の伴侶となるを。