Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

たそがれ

黄昏

宮本 百合子

Lisez 黄昏 (たそがれ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 500 caractères · 29 écrans

Aozora Bunko

――その積りで家を出たのではなかったが、いかにも歩き心地よさそうに日の照った往来に出ると、おくめの心には、一層「沢屋」という文字が鮮やかになって来た。前を通っている電車にさえ乗れば乗換えもなく万世橋まで行ける。

「今頃は、何をしているのだろう。ひょっくりその角で出逢うまいものでもない。――」

ちらりと、彼女の方を振返りながら行き過ぎる男でもあると、おくめは、覚えず、どきりとした。

彼女は我知らず早足になり、大通りの、景気よく飾った呉服屋に入った。そして、望んでいた切地(きれじ)を買い、同時に、年齢に拘わらず女の心を牽きつける流行(はやり)の衣類などに目を楽しませると、不思議に焦立(いらだ)った気分も、自ら和(やわら)げられるように感じられた。

「何だろう、馬鹿馬鹿しい。まるで若い者みたいに――」おくめは昨夜(ゆうべ)来初めての余裕ある心持で、ひそかに苦笑さえした。が、再びほんのりと暖い往来に出、陽気にベルを鳴らしながら動いて行く電車を見ると、突然、彼女の心は、何ともいえず激しい力で衝き動かされた。

おくめは、際どく「あ! 一寸待って下さい」と叫んで、傍の仲間と笑い笑いハンドルを執っている運転手に車を、止めさせたい気さえした。