Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

てらだとらひこ

黄道

和辻 哲郎

Lisez 黄道 (てらだとらひこ) de 和辻 哲郎 (わつじてつろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 28 971 caractères · 59 écrans

Aozora Bunko

五

我々は空地の樹の傍に蚊帳を釣って子供たちを寝せてから、茄子畑のそばで茫然としてこの火を眺めながら夜を明かした。ちょうど十六夜で、煙の向こうから真っ赤な姿を現わした月が、煙を離れてからはその白い光で煙の上部の団々とした雲塊を照らしていた。森蔭のこのあたりにも月光と火事の火の明るさとがまじった。我々はいじけた心でこの火の小さくなることをのみ念じていたが、火はむしろだんだん盛んになり、ひろがって行くように思えた。我々は大火というものの物凄さを初めて理解することができた。この調子では何物も残さずに焼くであろう。人力ではもう如何ともすることができない。地震時の大火とはなるほどこれなのだ。それは我々の考えていた火事とは別物である――こう我々が悟り始めたのは、大火が始まってから十時間も後なのである。

五

翌朝になると夜の内に本郷まで行って来た隣のF氏が帰って来て、小石川や麹町の焼けていることを話した。日本橋の親類を探しに丸の内へ出掛けた近所の新城は、呉服橋に焼死体が累々として横たわっている惨状を話した。そうして麹町の火が四谷の方向に延びつつあることを言った。見ると火事の煙は依然として盛んにのぼっている。