Classiques japonais avec furigana
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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
Lisez 黒蜥蜴 (くろとかげ) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 107 633 caractères · 215 écrans
物いえば四方の壁にこだまするかと思われる広間には、全体何があるのだろう。
またしても、闇の中に、北島と咲子の断末魔の、吐き気をもよおすような、醜怪な物すごい形相が、二重写しになって、まざまざと浮きあがった。おれは今、やつらの悪霊に招きよせられて、よみじの闇をさまよっているのではないかしら。彼は生れてから経験したこともない奇怪な錯覚におちいって、からだじゅうに脂汗を流していた。
黒衣婦人の手にする懐中電燈の丸い光は、何かを探し求めるように、ソロソロと床の上を這って行った。
敷物のない、荒い木目の床板が、一枚一枚と、円光の中を通りすぎる。やがて、ニスのはげた頑丈な机のようなものが、脚の方からだんだんと光の中へはいってくる。長い大きな机だ。おや、人間だ。人間の足だ。では、この部屋にはだれかが寝ているのだな。
だが、いやにひからびた老人の足だぞ。それに足首に、紐で木の札がむすびつけてあるのは、一体どういう意味なのだ。
おや、このおやじ、寒いのにはだかで寝ているのかしら。
円光は腿から腹、腹からあばら骨の見えすいた胸へと移動し、次には鶏の足みたいな頸から、ガックリ落ちた顎、馬鹿のようにひらいた唇、むき出した歯、黒い口、くもりガラスのような光沢のない眼球……死骸だ。