Classiques japonais avec furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lisez 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 24 356 caractères · 51 écrans
枯葉の記
○
おのれにも飽きた姿や破芭蕉
香以山人の句である。江戸の富豪細木香以が老に至って家を失い木更津にかくれすんだ時の句である。辞世の作だとも言伝えられている。
ある日わたくしは台処の流しで一人米をとぎながら、ふと半あけてあった窓の外を見た時、破垣の上に隣の庭の無花果が枯葉をつけた枝をさし伸しているのを見て、何というきたならしい枯葉だろう。と思った。枯葉の中にあんなきたならしいのがあるだろうかと思うにつけて、ふと香以の句が胸に浮んだのである。しなびて散りもせぬ無花果の枯葉は全くきたならしい。
時節は十一月のはじめ、小春の日かげに八ツ手の花はきらきらと輝き木斛の葉は光沢を増し楓は霜にそまり、散るべき木の葉はもう大抵ちってしまった後である。しかるに無花果の葉は萎れながらに黄みもせず薄い緑の褪せ果てた色さえ残しながら、濡れた紙屑の捨てられたように枯枝のところどころにへばり付いている。洗いざらしのぼろきれよりもなおきたならしい。この姿にくらべると、大きな芭蕉の葉のずたずたに裂かれながらも、だらりと、ゆるやかに垂れさがった形には泰然自若とした態度が見える。