Classiques japonais avec furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lisez 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 24 356 caractères · 51 écrans
紙がないと言いながら襖や障子の代りになるものは誰も考案しないようである。政治は口と筆とさえあればこれを論ずるに難くはないが、戸障子の如何は実際の問題で空論ではないからであろう。
○半紙だか美濃紙だか、また西の内だか何だか知らぬが、とにかく楮の樹皮から製した日本紙を張った障子の美は、もう久しい前から、田舎の旧家とか寺とかいう特別な処に行かないかぎり見られないものになっていた。しかしわたくしにはその記憶だけは今でもどうやら消えずに残されている。暗く曇った日に、茶室の障子の白さを茂った若葉の蔭に見る快感は西洋の家には求めても得られない。昼過の軟な日光に、冬枯れした庭木の影が婆娑として白い紙の上に描かれる風趣。春の夜に梅の枝の影を窓の障子に見る時の心持。それはすでに清元浄瑠璃の外題にも取入れられている。赤く霜に染みた木の葉や木の実に対照する縁先の障子の白さの如きはとうてい油絵には現せないものであろう。戦争は日本固有のさまざまなる好き物を滅した中に、障子の事も数え入れられるであろう。
○人の家の貸間に住んで見ると、家屋も庭園も他人のものであるから、地震にも暴風雨にも何の心配もいらない。