Classiques japonais avec furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lisez 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 24 356 caractères · 51 écrans
しかし自分はどうした訳であろう。ただ何という事もなくがっかりしたのだ。一種の悲愁と、一種の絶望を覚えたのだ。ああ、どうしたわけであろう。どうしたわけであろう。
毎日の曇天。十一月の半過ぎ。寂とした根岸の里。湿った道の生垣つづき。自分はひとり、時雨を恐れる蝙蝠傘を杖にして、落葉の多い車坂を上った。巴里の墓地に立つ悲しいシープレーの樹を見るような真黒な杉の立木に、木陰の空気はことさらに湿って、冷かに人の肌をさす。
淋しくも静かに立ち連った石燈籠の列を横に見て、自分は見晴しの方へと、灰色に砂の乾いた往来の導くままに曲って行った。危い空模様の事とて人通りはほとんどない。ところどころの休茶屋の、雨ざらしにされた床几の上には、枯葉にまじって鳥の糞が落ちている。幾匹と知れぬ鴉の群ればかり、霊廟の方から山王台まで、さしもに広い上野の森中せましと騒ぎ立てている。その厭わしい鳴声は、日の暮れが俄かに近いて来たように、何という訳もなく人の心を不安ならしめる。自分は黒い杉の木立の間をば、脚袢に手甲がけ、編笠かぶった女の、四人五人、高箒と熊手を動し、落葉枯枝をかきよせているのをば、時々は不思議そうに打眺めながら、摺鉢山の麓を鳥居の方へと急いだ。