Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

アイえきのいちや

I駅の一夜

中谷 宇吉郎

Lisez I駅の一夜 (アイえきのいちや) de 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 480 caractères · 10 écrans

Aozora Bunko

其処の障子の蔭が帳場らしい様子である。果して宿屋らしい。

簡単に事情を言って、食事は要らないから一晩だけ泊めてもらえないかと頼んでみた。すると真暗な中から女中らしい女が出て来て、気の毒だが、もうすっかり満員で、蒲団がないから泊められないと言う。これだけでもひっかかりが出来れば脈がある。防寒具は持っているから、とにかくこの雪では外で寝るわけには行かないからと頼んでみた。

すると「はなや、一体蒲団は一枚もないのかね」と帳場の障子の蔭から、綺麗な言葉使いで若い女の声がした。「夏蒲団が二枚残ってるだけでさあ」と女中は帳場の方と私と両方にかけたような返事である。「それだけあれば結構です、毛皮を用意して来ていますから」と私の方も一所懸命である。

「お気の毒ですから、泊めておあげなさい。誠にすみませんが、其処で御所と御名前を言って下さいませんか」と若い女の声は依然薄暗がりの障子の中からの応対である。此処で断られては大変なので、官職を書いた名刺を出して、こういうもので決して怪しい者ではないからと、女中さんに取次ぎを頼んだ。

ところが名刺を持った女中が、障子の蔭へはいって行って、なかなか出て来ない。