Classiques japonais avec furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lisez おせん de 邦枝 完二 (くにえだかんじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 074 caractères · 148 écrans
のうおせん。赤の他人でさえ、事を分けて、かくかくの次第と頼まれりゃ、いやとばかりゃァいえなかろう。おいらァおめえの兄貴だよ。――血を分けた、たった一人の兄貴だよ。それも、百とまとまった金が入用だという訳じゃねえ。四半分の二十五両で事が済むんだ」
「二十五両。――」
「みっともねえ。驚く程の高でもあるめえ」
「でも、そんなお金は。……」
「だからよ。初手からいってる通り、おめえやお袋の臍くりから、引っ張り出そうたァいやァしねえや。狙いをつけたなあの若旦那、橘屋の徳太郎というでくの棒よ。ふふふふ。何んの雑作もありァしねえ。おめえがここでたった一言。おなつかしゅうござんす、とかなんとかいってくれさえすりァ、おいらの頼みァ聴いてもらえようッてんだ。お釈迦が甘茶で眼病を直すより、もっとわけねえ仕事じゃねえか」
「それでもあたしゃ。心にもないことをいって。……」
「そ、その料簡がいけねえんだ。腹にあろうがなかろうが、武士は戦略、坊主は方便、時と場合じゃ、人の寝首をかくことさえあろうじゃねえか。――さ、ここに筆と紙がある。いろはのいの字とろの字を書いて、いろよい返事をしてやんねえ」