Classiques japonais avec furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lisez おせん de 邦枝 完二 (くにえだかんじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 074 caractères · 148 écrans
「聞かせねえ」
「だすか」
「仕方がねえ、出しやしょう」
すると春重は、きょろりと辺を見廻してから、俄に首だけ前へ突出した。
「耳をかしな」
「こうか」
「――」
「ふふ、ほんとうかい。重さん。――」
「嘘はお釈迦の御法度だ」
痩た松五郎の眼が再び春重の顔に戻った時、春重はおもむろに、ふところから何物かを取出して松五郎の鼻の先にひけらかした。
七
足もとに、尾花の影は淡かった。
「なんだい」
「なんだかよく見さっし」
八の字を深くしながら、寄せた松五郎の眼先を、ちらとかすめたのは、鶯の糞をいれて使うという、近頃はやりの紅色の糠袋だった。
「こいつァ重さん、糠袋じゃァねえか」
「まずの」
「一朱はずんで、糠袋を見せてもらうどじはあるめえぜ。――お前いまなんてッた。おせんの雪のはだから切り取った、天下に二つと無え代物を拝ませてやるからと。――」
「叱ッ、極内だ」
「だってそんな糠袋。……」
「袋じゃねえよ。おいらの見せるなこの中味だ。文句があるンなら、拝んでからにしてくんな。――それこいつだ。触った味はどんなもんだの」
ぐっと伸ばした松五郎の手先へ、春重は仰々しく糠袋を突出したが、さて暫くすると、再び取っておのが額へ押し当てた。