Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おりつとこらと

お律と子等と

芥川 竜之介

Lisez お律と子等と (おりつとこらと) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 25 195 caractères · 51 écrans

Aozora Bunko

「神山さんはいないのかい?」

洋一は帳場机に坐りながら、店員の一人の顔を見上げた。

「さっき、何だか奥の使いに行きました。――良さん。どこだか知らないかい?」

「神山さんか? I don't know ですな。」

そう答えた店員は、上り框にしゃがんだまま、あとは口笛を鳴らし始めた。

その間に洋一は、そこにあった頼信紙へ、せっせと万年筆を動かしていた。ある地方の高等学校へ、去年の秋入学した兄、――彼よりも色の黒い、彼よりも肥った兄の顔が、彼には今も頭のどこかに、ありあり浮んで見えるような気がした。「ハハワルシ、スグカエレ」――彼は始こう書いたが、すぐにまた紙を裂いて、「ハハビョウキ、スグカエレ」と書き直した。それでも「ワルシ」と書いた事が、何か不吉な前兆のように、頭にこびりついて離れなかった。

「おい、ちょいとこれを打って来てくれないか?」

やっと書き上げた電報を店員の一人に渡した後、洋一は書き損じた紙を噛み噛み、店の後にある台所へ抜けて、晴れた日も薄暗い茶の間へ行った。茶の間には長火鉢の上の柱に、ある毛糸屋の広告を兼ねた、大きな日暦が懸っている。――そこに髪を切った浅川の叔母が、しきりと耳掻きを使いながら、忘れられたように坐っていた。