Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さるすべり

さるすべり

山本 周五郎

Lisez さるすべり de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 095 caractères · 24 écrans

Aozora Bunko

「やっぱりおまえだったな、奈保」治部介はそう云いながら女の衿をくつろげてやった。「しっかりしろ、おれだ、治部介だぞ」ああと低くうめいて女は身を起そうとした、かれは動いてはいけないと云った。「とても助かる傷ではない、云うことがあったら云え、どうして此処へ来たんだ」

「お眼にかかりたいと存じまして」

「もっとしっかり云え、なにか会う用があったのか、奈保、しっかり云うんだ」

「ひと眼、お会い申して」ほとんど聞きとれないほどの声だった、ひと眼会いたくて来たが、城を眼の前に見たらとりのぼせてしまい、みぐるしいふるまいをして申訳がない、おゆるし下さいという意味のことを云った。

「それだけか、奈保、おまえ、そんな未練者だったのか」治部介はどなりつけるように云った、しかし聞えなかったものか、女は大きく息をつきながらはっきりと呟いた。「わたくし御先途をいたします」そして眼をつむった。

治部介はもう息の絶えた妻の面を、ながいことじっと見まもっていた。良人への愛にひかされてこんな未練なことをする、そんな妻ではなかった筈だ。――なにを狼狽したんだ。そう叱りつけたかった。けれどもそのとき夜風が吹きわたり、猿滑の花がはらはらと妻の顔に散りかかるのをみて、かれはしずかに立って二の丸まで鍬を取りにいった。