Classiques japonais avec furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lisez すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 44 378 caractères · 88 écrans
だけれど、私も一生懸命にお稽古しなくっちゃならないんだもの。」
少しは声を曇したもののその調子は長吉の満足するほどの悲愁を帯びてはいなかった。長吉は暫くしてからまた突然に、
「なぜ芸者なんぞになるんだ。」
「またそんな事きくの。おかしいよ。長さんは。」
お糸は已に長吉のよく知っている事情をば再びくどくどしく繰返した。お糸が芸者になるという事は二、三年いやもっと前から長吉にも能く分っていた事である。その起因は大工であったお糸の父親がまだ生きていた頃から母親は手内職にと針仕事をしていたが、その得意先の一軒で橋場の妾宅にいる御新造がお糸の姿を見て是非娘分にして行末は立派な芸者にしたてたいといい出した事からである。御新造の実家は葭町で幅のきく芸者家であった。しかしその頃のお糸の家はさほどに困ってもいなかったし、第一に可愛い盛の子供を手放すのが辛かったので、親の手元でせいぜい芸を仕込ます事になった。その後父親が死んだ折には差当り頼りのない母親は橋場の御新造の世話で今の煎餅屋を出したような関係もあり、万事が金銭上の義理ばかりでなくて相方の好意から自然とお糸は葭町へ行くように誰れが強いるともなく決っていたのである。