Classiques japonais avec furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lisez すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 44 378 caractères · 88 écrans
その後に唄がつづく。
※(歌記号、1-3-28)しばし彳む上手より梅見返りの舟の唄。※(歌記号、1-3-28)忍ぶなら忍ぶなら闇の夜は置かしやんせ、月に雲のさはりなく、辛気待つ宵、十六夜の、内の首尾はエーよいとのよいとの。※(歌記号、1-3-28)聞く辻占にいそいそと雲足早き雨空も、思ひがけなく吹き晴れて見かはす月の顔と顔……
見物がまた騒ぐ。真黒に塗りたてた空の書割の中央を大きく穿抜いてある円い穴に灯がついて、雲形の蔽いをば糸で引上げるのが此方からでも能く見えた。余りに月が大きく明いから、大名屋敷の塀の方が遠くて月の方がかえって非常に近く見える。しかし長吉は他の見物も同様少しも美しい幻想を破られなかった。それのみならず去年の夏の末、お糸を葭町へ送るため、待合した今戸の橋から眺めた彼の大きな円い円い月を思起すと、もう舞台は舞台でなくなった。
着流し散髪の男がいかにも思いやつれた風で足許危く歩み出る。女と摺れちがいに顔を見合して、
「十六夜か。」
「清心さまか。」
女は男に縋って、「逢ひたかつたわいなア。」
見物人が「やア御両人。」「よいしょ。やけます。