Classiques japonais avec furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lisez すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 44 378 caractères · 88 écrans
長吉は一度別れたお糸とは互に異なるその境遇から日一日とその心までが遠かって行って、折角の幼馴染も遂にはあかの他人に等しいものになるであろう。よし時々に手紙の取りやりはして見ても感情の一致して行かない是非なさを、こまごまと恨んでいる。それにつけて、役者か芸人になりたいと思定めたが、その望みも遂に遂げられず、空しく床屋の吉さんの幸福を羨みながら、毎日ぼんやりと目的のない時間を送っているつまらなさ、今は自殺する勇気もないから病気にでもなって死ねばよいと書いてある。
蘿月は何というわけもなく、長吉が出水の中を歩いて病気になったのは故意にした事であって、全快する望はもう絶え果てているような実に果敢ない感に打たれた。自分は何故あの時あのような心にもない意見をして長吉の望みを妨げたのかと後悔の念に迫められた。蘿月はもう一度思うともなく、女に迷って親の家を追出された若い時分の事を回想した。そして自分はどうしても長吉の味方にならねばならぬ。長吉を役者にしてお糸と添わしてやらねば、親代々の家を潰してこれまでに浮世の苦労をしたかいがない。通人を以て自任する松風庵蘿月宗匠の名に愧ると思った。