Classiques japonais avec furigana
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そのきどをとおって
その木戸を通って
山本 周五郎
Lisez その木戸を通って (そのきどをとおって) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 448 caractères · 44 écrans
田原権右衛門は口を片方へねじ下げたので、皺の多いその顔が、そちらへ歪み、まるでべっかんこでもするようにみえた。
「では訊くが、いまおまえの家にいる娘は、どういう関係の者だ」
「私の家にですか」正四郎は唾をのんだ、「私の家には娘などおりませんが」
「いるから訊くんだ」
「それはなにかの間違いです」彼の語調はそこでちょっとよろめいた、「御承知のように、御勘定仕切の監査のため、私は三日まえからこの城中に詰め切っています、ですから、留守になにがあったかは知りませんが、三日まえに家を出るまでは」
「おまえの家に娘がいるのだ」田原はひそめた声できめつけた、「しかもそれを、加島どのの御息女が見て来られたのだ」
正四郎は口をあいた、「――ともえどのがですか」
「ともえどのは昨日、おまえが非番だと思って訪ねてゆかれた」そこで田原はまた口を片方へねじ下げた、「手作りの牡丹を持参され、おまえが城中へ詰めていると聞かれたので、家扶の吉塚に壺を出させ、おまえの居間へ活けて帰られた、そのとき見知らぬ娘がいるので、どういう者かと問い糺したところ、吉塚助十郎はたいそう当惑し、すぐには返辞ができなかった、やがてしどろもどろに、主人を訪ねてまいったのだが、どこから来たとも云わず名もなのらない、もちろん自分も見たことのない顔である、と申したそうだ」