Classiques japonais avec furigana
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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】
佐藤 春夫
Lisez たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) de 佐藤 春夫 (さとうはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 182 caractères · 48 écrans
重ね重ね甚だ尾籠の話だが、身体が活気に満ちているものだから、非常に太い長い一片を排泄する事になっている。それがまた、もう一つ尾籠な話だが、この大きな一片が落ちると、溜め壺の中はどうゆうわけか何時も水気が多くて、為めにスプラッシュを起し、飛ばっちりが上まで跳ね反って来るような状態にある。
それで、何時も排泄して了うと注意深く用心をする。そうして、水っぽい中へ落ちてゆく固りの音を聴くのであった。
一たい寄宿舎の便所だから、普通のものに比べて溜めは出来るだけ深く、大きくしてある。そうしなければ、直ぐに充溢して了うわけである。
深いだけに、上からの距離も遠くって重力の関係でなかなか大きな水音がする。
この晩も毎晩の如く逞し気なものを排泄して、さて注意をしてみたが不思議と何の物音もしない。まるで無限の深い所に転がり入って了ったかのように、自分の落したものの反響を聞かないのであった。
不思議に思って、ちょうど喫い終った莨を中へ放りこむと、一瞬間薄明るくなって水の中で消える音が聞えた。
してみると、矢張り水が溜っているのである。それに、火が消えて了うまでの薄明りの中で、見慣れぬ変なものが底から見えたような気がする。