Classiques japonais avec furigana
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きつねつき
ちくま日本文学012 中島敦
Lisez ちくま日本文学012 中島敦 (きつねつき) de Nakajima Atsushi (中島 敦) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 136 caractères · 19 écrans
湖上の民は必死になって禦いだ。初めは湖畔に出て侵略者を迎え撃った彼等も名だたる北方草原の騎馬兵に当りかねて、湖上の栖処に退いた。湖岸との間の橋桁を撤して、家々の窓を銃眼に、投石器や弓矢で応戦した。独木舟を操るに巧みでない遊牧民は、湖上の村の殲滅を断念し、湖畔に残された家畜を奪っただけで、また、疾風のように北方に帰って行った。後には、血が染んだ湖畔の土の上に、頭と右手との無い屍体ばかりが幾つか残されていた。頭と右手だけは、侵略者が斬取って持って帰ってしまった。頭蓋骨は、その外側を鍍金して髑髏杯を作るため、右手は、爪をつけたまま皮を剥いで手袋とするためである。シャクの弟のデックの屍体もそうした辱しめを受けて打捨てられていた。顔が無いので、服装と持物とによって見分ける外はないのだが、革帯の目印と鉞の飾とによって紛れもない弟の屍体をたずね出した時、シャクはしばらく茫っとしたままその惨めな姿を眺めていた。その様子が、どうも、弟の死を悼んでいるのとはどこか違うように見えた、と、後でそう言っていた者がある。
その後間もなくシャクは妙な譫言をいうようになった。何がこの男にのり移って奇怪な言葉を吐かせるのか、初め近処の人々には判らなかった。