Classiques japonais avec furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lisez ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 85 196 caractères · 169 écrans
津村は祖母の生前に出来るだけ母の経歴を調べておきたいと思って、いろいろ尋ねたけれども、祖母は何分にも忘れてしまったと云うことで、はかばかしい答は得られなかった。親類の誰彼、伯父伯母などに聞いてみても、母の里方については、不思議に知っている者がなかった。ぜんたい津村家は旧家であるから、あたりまえなら二代も三代も前からの縁者が出入りしているはずであるが、母は実は、大和からすぐ彼の父に嫁いだのでなく、幼少の頃大阪の色町へ売られ、そこからいったん然るべき人の養女になって輿入れをしたらしい。それで戸籍面の記載では、文久三年に生れ、明治十年に十五歳で今橋三丁目浦門喜十郎の許から津村家へ嫁ぎ、明治二十四年に二十九歳で死亡している。中学を卒業する頃の津村は、母に関してようようこれだけのことしか知らなかった。後から考えれば、祖母や親戚の年寄たちが余り話してくれなかったのは、母の前身が前身であるから、語るを好まなかったのであろう。しかし津村の気持では、自分の母が狭斜の巷に生い立った人であると云う事実は、ただなつかしさを増すばかりで別に不名誉とも不愉快とも感じなかった。