Classiques japonais avec furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lisez ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 85 196 caractères · 169 écrans
三の公の谷へ這入る。しかし入の波へ行く本道は「道」に違いないが、右へ折れる方は木深い杉林の中に、わずかにそれと人の足跡を辿れるくらいな筋が附いているだけである。おまけに前夜降雨があって、二の股川の水嵩がにわかに殖え、丸木橋が落ちたり崩れかかったりしていて、激流の逆捲く岩の上を飛び飛びに、時には四つ這いに這わないと越えることが出来ない。二の股川の奥に「オクタマガワ」があり、それから地蔵河原を渡渉して、最後に三の公川に達するまで、川と川との間の路は、何丈と知れぬ絶壁の削り立った側面を縫うて、ある所では両足を並べられないほど狭く、ある所では路が全く欠けてしまって、向うの崖からこちらの崖へ丸太を渡したり、桟を打った板を懸けたり、それらの丸太や板を宙で繋ぎ合わして、崖の横腹を幾曲りも迂廻したりしている。こんな所を歩くのは、山岳家なら朝飯前の仕事であろうが、私は元来中学時代に機械体操が非常に不得手で、鉄棒や棚や木馬にはいつも泣かされた男なのである。その頃は年も若かったし、今ほど太ってもいなかったから、平地を行くのなら八里や十里は歩けたけれども、こう云う難所は四肢を使って進むので、足の強弱の問題でなく、全身の運動の巧拙に関する。