Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

つばくろ

つばくろ

山本 周五郎

Lisez つばくろ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 987 caractères · 44 écrans

Aozora Bunko

初めてその饅頭を食べたときの、三之助の嬉しそうな顔は、おいちには長く忘れることができなかった。……高雄の母のとりなしで、青野へひきとられてから、おいちはもう三之助を訪ねることはできなかった。新らしい生活を身につけることでいっぱいだったし、時の経つうちにしぜんと忘れていった。そうしておいちは紀平家の嫁になったのである。

今年の一月の下旬、おいちは大助の虫封じに泰昌寺へ参詣をした。その帰りに三之助に呼びとめられ、彼に強いられるままに、蘆谷河畔の伊丹亭という料亭にあがった。

三之助はひどく痩せて、蒼白い顔になり、しきりに咳をしていた。彼は初めから昂奮しておちつかないようすだったが、坐ってまもなく思い詰めたような表情で、意外なことを云いだした。

――私は今では逃亡者なんです。

彼はまずこう口を切った。前の年の暮に彼は婿の話しが定った、先方は江戸邸の者で、五石三人扶持くらいの徒士だという。それもいいが話しの纏めかたが乱暴で投げやりで、下僕たちまでが「厄介ばらいだ」などと蔭口をきいていた。そして正月になるとすぐ、若干の金を呉れ、殆んど着のみ着のままで、江戸邸のこれこれという者を訪ねてゆくようにと、命令するように云われたのであった。