Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans

Aozora Bunko

銀座通のカッフェーはこのドンフワンに限らず、いずこも十時過ぎてから店のしめ際になって急に込み合って来るのが常である。絶間なく鳴りひびく蓄音機の音も、どうかすると掻消されるほど騒しい人の声やら皿の音に加えて、煙草の烟や塵ほこりに、唯さえ頭の痛くなる時分、君江は自分ながらも今夜は少し酔い過ぎたと思っている矢先、目の前には三人の男が落ち合ったのみならず、家の方にも待っているものがあると聞いて、どうしてよいのやら、殆ど途法に暮れてしまった。今夜にかぎって、どうしてこうも都合が悪るいようになったのだろうと、自分の身よりも罪のない他人を恨むばかり。一層この場で酔いつぶれてさえしまえば周囲の者が結句どうにか始末をつけてくれるだろうと、君江は松崎老人の卓に来て、

「今夜わたしべろべろに酔って見たいのよ。オトカを飲まして頂戴。」

「何かいざこざがあるな。お客と喧嘩でもしたのか。」と松崎は年を取っているだけ、すぐに気がついたらしい。

「いいえ。そうじゃないのよ。だけれど。」

「だけれど。やっぱりそういう訳じゃないかね。」

君江は返事に窮って黙ってしまったが、その時ふと、この老人とは女給にならない以前からの知合いで、身の上の事は何も彼も承知している人だから、内々打明けて相談した方がよいかも知れないと思いついた。