Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひやめしものがたり
ひやめし物語
山本 周五郎
Lisez ひやめし物語 (ひやめしものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 861 caractères · 31 écrans
「さる処でこの品を拾いましたので」家士が出て来ると、彼はこう云いながら紙入を差出した。
「御当家の名札が入っていましたからお届けにまいりました、どうかお受取り下さい」
「それは御迷惑でござりました、暫くお控え下さい」
家士は紙入を持って奥へいったが、代って出て来たのは主の中川八郎兵衛だった。読者諸君はもう河重の小座敷で面識がある、老人はあの時より渋くれたふきげんな顔つきで、まずじろりと咎めるように睨んだ。
「紙入を届けてまいったのは其許か」
「さようでございます」
「戻す……」こう云って老人は紙入を大四郎の手に返した、「これは受取るわけにはまいらぬ」
「然しお名札が入っておりますが」
「名札は入っておる、わしの紙入にも間違いはない、だが中の金が足らぬのだ」
「ははあ……」大四郎は老人の云う意味がよく解せなかった、「さようでございますか」
「この中には三両二分二朱ある筈だ、それが二両一分二朱しか無い、つまり差引き一両一分不足しておる」
「それはけげんなしだいですな」仕方がないので彼はこう云った、「申すまでもないと思いますが、私は中の金に就いてはなにも存じません、お名札を拝見したのでお届けにまいっただけですから」